料理にニンニク入れとけばなんでも上手くなるんじゃない?と思っている書道家の長谷川悠貴です。
ニンニクと生姜を入れたスパイシー豚汁めちゃめちゃ美味しいですよ〜。
ということで今回は『筆の字は上手いのにペンの字は下手なのはなぜ??』というテーマでやっていきたいと思います。
【書道をやっていても字は上手くない】
実は僕、ペン字はあまり上手くはなかったんです。
以前個展を開いた際に来て下さった50代の男性のしゃべっている言葉が聞こえてきました。
「書道をやっていてもこんな字を書くんだな。」
書作品の横に貼ってある手書きのキャプション(作品のタイトルを書いた紙)を見てそうつぶやいているのを聞いてしまったのです。
正直なところペン字にもそこそこ自信はありました。
20年以上書道をやってきているという自負もありました。
あんなこと言われたけどそんなはずはない!という思いから後日、悔しくて書道経験の無いちょっと字がきれいな子(僕と同年代の子)とどっちが上手いか勝負をしてみたんです。
何人かの人に僕の書いた字とその子の書いた字を比べて見て投票したところ、見事に破れるという事態。
どうやら僕の字は見やすい文字ではなく、クセのある字と認識されていたようです。
書道の場合は自己表現といってしまえばそれで終わりです。
しかしペン字の場合は相手がどう思うか、相手からどう思われるかが全てです。
「エチケット」のような気遣いというか身だしなみと捉えるべきなんだとそこで気が付きました。
その時に『誰が見ても上手いと思われる字にならなければ』という強い想いを抱きました。
それからキレイな字、上手い字とはなんなのか、文字の法則、原則がどれだけあるだろうかと考え始めました。
【書道をやっていてもペンの字がヘタなのはなぜ?】
筆を持たせたら上手いけどペン字はそうでもないなという人がいます。
そのうちの一人が僕でしたが、どうしてこれが起きてしまうかというと知識ではなく感覚で書いているからなんです。
字形の骨格形成が不十分だから。
書道の字(筆の字)をカッコよくするためにはどうすればいいかというと、簡単に言ってしまえば立体感を付ければいいんです。
トメ・ハネ・ハライをしっかりと行い、文字の中に太い線と細い線の両方を出せれば立体感が出てなんとなくカッコよく見えます。
つまり『肉の付け方』でカッコよさは付けられます。
ところがペン字の場合は筆のように「肉」を付けることが出来ません。
ペンで字を書く際には「骨格」で勝負せざるを得なくなります。
筆の時だって形も意識しています。
しているはずなんですが実は頭から抜けているんです。
今でもそうですが、ペン字の時には「形」をものすごく意識して書きますが、筆で同じ字を書いてみるとあら不思議、「形」の意識がとっても薄れているんです。
脳波を取ってほしいくらい。
形(骨格)を意識して書くことは確かに出来ます。
出来るんですがペン字の時のような意識で筆字を書くと全然カッコ良くならない。
形にとらわれていると線が悪くなる。
つまり、筆字のカッコ良さを決める「勢い」や「立体感」が影を潜めてしまう。
カッコ良くならないから自然と『肉付き』で勝負することになっていく。
ペン字と書道。
同じ「字」を扱っているものの感覚が違うことを実感します。
字の勉強をしていくうちに、いかに感覚だけで書いていたかを痛いほど感じました。
「ココはこういう理論だからこの線は右上がりを強くして、こっちの線はやや短めにしておく」みたいな『知識』で書いていなかった。
あいまいな雰囲気で、感覚的に書いており、それぞれのパーツの書き方や文字の作り方にクセが生じていたのは自分本位な書き方をしていたんです。
文字の原則を破っていたりズレているものが自分の字にはたくさんあることも発覚しました。もちろん技術不足(線を上手く引けていない)というのもあります。
文字を上手くするには古典から字例や文字の原則を「知識」として学ぶこと、線「技術」の両方が必要。
【2年間の修行の時】
2019年に『2年間ペン字に専念する』ということを決めました。
2年間一切筆を持たない。
作品を作るのはもちろん、練習もしない。
書道の仕事をオファーされても申し訳ないけど断る。
『誰が見ても問答無用で上手いと思わせる字を書いてやる』
という目標を持って、それから2年間一切筆を取らずにペン字に専念しました。
6歳からずっと書道をやってきてそんな長い期間筆を持たないということはありませんでしたので一大決心です。
その間、ありがたいことに書道の仕事をたくさんオファーしていただいたのですが断り続けました。(その節は大変申し訳ございませんでした)
この期間は本当に必要な時間だったとつくづく感じています。
2年の時が過ぎ、書道を解禁しました。
この2年間本当に1度も筆を持っていなかったにも関わらず書道のレベルも上がっていたのです。
要因はいくつかあるのですが、文字という根幹の部分を深く追求したことが大きな要因となっています。
久しぶりに筆を持った時はどうなるかな?プルプル震えて線引けないんじゃなかな?
とドキドキしていましたが、案外違和感なく書けました。
感覚が身に染み付いてるからでしょうか。
自転車のような感覚です。
現在2022年では書道もペン字も両方やっています。
常にアップデートを続けています。
4年前の字を見ると別人か!ってほどになっています。
マスのサイズもペンの種類もペンの太さも全て同条件。
ペンは「シグノ307」。太さは0.5mm。
この2018年の字は決してテキトーに書いたわけでもなんでもありません。
その時点での純粋なレベル。
でもそれからここまで変わることが出来ました。
1つのポイントとしては前回の記事でもお伝えしましたが、『大きく書く』ということ。
「2.5cmのマス」で練習を重ねたということは重要です。
2018年時は少し小さいですが、それからちゃんと大きく書くことを意識していたことで字が上手くなる好循環が生まれました。
ということで、実はペンの字は上手くないと言われていた過去があったよという告白と、筆とペンは似て非なるものですよ〜という話でした。
それではまた次回!
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